寺原隼人の‘甲子園最速記録’に関するあれこれ

日刊スポーツ系列の記事は、寺原が日南学園高校時代に甲子園で出した‘甲子園最速記録’のスピードを相変わらず98マイル(157.68キロ)と書いている。この半端な数字は、寺原が例の記録を出した投球で*1、スタンドにいたブレーブスのスカウトのスピードガンが98マイル*2を表示したことに由来している[大阪日刊]。


一方で、このときに球場のスピードガンを使用したNHKのスピード表示は154キロであった。また別の投球では、スカウトのスピードガンが155キロと表示した時、NHKでは151キロと表示された。なぜこのような差が生じるかというと、球場のスピードガンは初速と終速の平均を表示しているのに対し、スカウトマンが通常持っているスピードガンは初速だけを測定しているからである[毎日,2001.8.17]。そもそも、スピードガンの計測は計測位置によっても変わり、球場のスピードガン計測でも、同じ投手の最高速が球場ごとに異なって表示されることは一般に広く知られていることである。

さらに付け加えると、甲子園大会では公式のスピードは(おそらく教育的配慮によって)表示していないものの、試合を中継したNHKのスピード計測を大会の‘高校生最速’記録としている[スポーツナビ]。


このような背景がある以上、仮にあの日にブレーブスのスカウトが持っていたスピードガンのネジが緩んでいなかったのだとしても、その装置のスピード表示が、球場のスピードガンの表示よりも優先して、かつ但し書き無しに報道するべき値とはとても思えない。1キロでも早い値を紙面に載せた方が新聞が売れそうな気がしたであろう2001年の夏ならともかく、今なお、寺原は過去98マイルを出したとする報道が存在する理由が全く理解できない。寺原が甲子園で出した記録は平均で154キロ。それで何がいけないのだろう。

参考リンク

*1:第83回全国高校野球選手権大会(2001年)9日目・対玉野光南戦六回裏、打者・福田への投球。

*2:1mile=1.6093kmだが、1mile=1.609kmで計算すると98mile/h=157.682km/hとなる。