和巳くん、よーく考えよう。

18日、斉藤和巳が1回目の契約更改交渉で出来高払いを要求したという[日刊九州,12/19]。

球団提示は1億5000万円。斉藤は今季年俸3000万円とはいえ、20勝したうえに3敗しかしておらず、なおかつ防御率(2.83)も1位、勝率(.870)も当然1位。沢村賞ベストナイン。間違いなくシーズンでもMVP級の活躍だった。年俸が2億・3億の選手だろうと、少なくとも1億円アップは当然予想される数字だ。


実際、上原(巨人)は16勝(5敗)で9000万円アップ、松坂(西武)も16勝(7敗)で8500万円アップで契約更改している。20勝した斉藤が彼らよりアップ金額が下回るなら判子を押せない気分になっても仕方がない。ただし、斉藤の昨年までの実績が7年間で9勝4敗とほとんどないことは考慮されなければならない。

ちなみに、1999年に上原(巨人)が入団1年目でいきなり20勝(4敗)をあげたときには、1300万円から5300万円アップの6600万円、前年比5.1倍で契約更改している。今から考えると信じられない額だが、この年の巨人は2位どまりという不運もあった。斉藤は今季8年目の3000万円で球団も日本一だから単純にこのときの上原との比較にはならないが、事前交渉で球団が提示した1億3000万円は4.3倍。当日提示した1億5000万円は5倍。これだけ上げれば斉藤もまさか文句は言うまい。球団もそう考えて、当日は自信を持って提示した額だったのではないか。


ではなぜ斉藤は、球団提示に不満はないと言いながらもインセンティブ契約を求めているのだろう。


スポーツ報知[12/18]は「仮に来季の勝ち星が10勝にとどまれば、並の投手なら大幅アップでも、逆に大幅ダウンを食らうのでは」と斉藤が考えているからではないかと指摘している。確かに、年俸が高い選手にはそれなりに求められる‘ノルマ’も高くなるのは仕方がないが、10勝してもダウンされたら割り切れないだろう。そして、ダイエーのフロントなら本当にそういうことをやらかしかねない気がするのだろう。

だが、和巳くん。よーく考えてみよう。川崎(中日)の例を持ち出すまでもなく、仮に来季1イニングも投げられなかったとしても30%ダウンまでだ*1。だったら、10勝したらどんなにダイエー球団が冷酷非道でも5%ダウンくらいが限度だよ。


たとえば、年俸が2億5000万円でありながら今季14試合で5勝3敗だった桑田(巨人)は、3400万円ダウン(−14%)の2億1000万円で契約更改している。同じく、3億円だった工藤は18試合7勝6敗の平凡な成績だったが、2000万円ダウン(−5%)の2億8000万円で契約更改している。これは巨人だから特別甘いのではない。1億1000万円だった中日の川上憲伸は右肩痛で途中から戦線離脱し8試合4勝3敗だったにもかかわらず、500万円ダウン(−5%)の1億500万円で契約更改している。

このように球界全体で考えても、もし斉藤が来年1年間ローテーションを守り10勝してなお10%ダウンをくらったら、コミッショナーに調停を依頼してもいいくらいだ。だから、心配なんかする必要はない。安心してていい。その代わりに、故障もないのに不甲斐ない投球で5勝程度しかできなかったら20%ダウンだって甘んじて受け入れるくらいの気持ちで腹をくくって来季に臨んで欲しい。


逆に、もし斉藤が来年10勝以上した場合は、それ以降1勝ごとに1000万円は上がると思っていいだろう。初めの方でも例に挙げたが、上原(巨人)は2億1000万円から、27試合16勝5敗で9000万円アップ(+43%)の3億円で契約更改した。これも別に巨人だからではない。松坂(西武)は1億1500万円から、29試合16勝7敗で8500万円アップ(+74%)の2億円で契約更改している。

だから、斉藤は来年勝てなかったときのことを心配するよりは、15勝して堂々と2億円要求してやろうと前向きに考えたほうがよほどいい。そして15勝したら「来年はもっと勝てそうな気がします。これからは毎年20勝を目指して頑張ります」と、ほらでもいいから言ってみればいい。球団フロントの青ざめる顔が今から目に浮かぶようだ。そうしたら、今度は逆に球団の方からインセンティブ契約を提案してくるだろう。そのときに複数年契約を含めて細部までゆっくり話し合えばいい。


今回の保留の背景には、ダイエーのフロントに対する不信感があるのは分かる。それでも和巳くん、よーく考えよう。お金は大事だよ。投手陣の待遇改善も大事だよ。けれど、ファンの目も大事だよ。今年は、1回保留して球団フロントを牽制しただけで善しとしましょうよ。 (hawkswatcher)

(最終更新:2003.12.20)

追記

斉藤は12月26日、2回目の交渉を保留した。
斉藤は12月29日、3回目の交渉にて上積みなしの1億5000万円で更改した。

参考リンク

参考リンク:追加分

*1:1億円を超える選手の年俸の減俸額は選手の同意がない限り野球協約で30%ダウンまで(1億円未満の選手は25%)だから、仮に斉藤が今年1億5000万円で契約したとすると、もしも来年故障などで0勝でも斉藤の同意無しには1億500万円以下には下がらない。